志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に 土壁塗りワークショップも

伊勢志摩経済新聞掲載2019.11.19

志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に(撮影=岩咲滋雨)

志摩で「石の上に家」 古き良き建築構法後世に(撮影=岩咲滋雨)

 志摩市阿児町の竹内和彦さんと妻の千鶴さんが現在、昔ながらの「石場建て」の建築構法を使い石の上に住宅を建築している。

【その他の画像】石の上に家

 建築現場は、入り組んだリアス式海岸の英虞湾近くにある、約2800 坪の高台の森の中。地域の伝統建築の良さを大切にしている東原建築工房(志摩市阿児町立神)が施工を担当する。

 「石場建て」の住宅を新築するに至ったきっかけは、同敷地内に生命保険会社の支店長などを歴任した徳島県阿波市出身の猪子彌平(いのこやへい)さんの住居として1934(昭和9)年に建てられた築85年の「旧猪子家住宅」があり、その住宅の木造平屋建ての主屋と土蔵、門柱が「第二次世界大戦後に伊勢志摩国立公園となり、保養地としての利用が進んだこの地域の和洋折衷の建物の先駆け的な建造物」として2018(平成30)年3月27日に国の有形文化財(建造物)として登録されたこと。

 千鶴さんは「志摩地域の文化のプラットホームになればと、『旧猪子家住宅』の利活用のために、より自由なスペースの必要性を感じ、新たに寝泊まりも可能な建物を作ろうと考えた。せっかく作るのなら、古き良き建築構法を守ろうとしている東原さんにお願いしたいと依頼。実際に柱が立ち家の形を成してくると、やってよかったと満足している。これから竹を編んで土壁を塗ったり、もみ殻を屋根や床の断熱材に使用したりと地域の材料を有効に利用しながら、住むだけでなく、技術の伝承にもつながれば」と話す。

 しかしながら耐震偽装事件以降、今の建築物は、より多くの手続きが求められるようになり、石の上に柱が載っているだけで、建物と礎石との縁が切れている「石場建て」の家は、現在の建築基準法にはその位置付けがないに等しく、通常の確認申請でなく、限界耐力計算で構造安全性を証明し、構造適合判定の審査に合格することが求められるなど、新築するための条件が厳しくなっている。

 東原建築工房代表の東原達也さんは「2階建て以上の石場建てに必要な構造計算方法は手続きが煩雑だったり、計算できる人がいないため申請のハードルはさらに高い」と現状を説明する。三重県の建設開発課の担当者も「20年以上勤務しているが、三重県内で石場建ての建造物に関わったのはたった1度だけ」と打ち明ける。

 「木組み、土壁、石場建てなどの伝統構法の良いところは、その土地にある木材や材料を使いながらその土地の気候や風土に適応しやすい建物となること。昔の家や神社・お寺ではよく見かけるが、現在では石場建ての家を新築しようとする施主さんが少なく、伝統構法が途絶えようとしている。竹内さんには石場建ての良さに加え、その技術の伝承や人材の育成の大切さもご理解いただきとても有り難い。伝統構法の素晴らしさを理解してくれる人が一人でも増えれば」とも。

 11月17日~19日は、竹を編み、土をこねて壁を塗る「竹小舞・土壁ワークショップ」を行う。東原さんは「伝統構法に興味のある人や体験してみたい人は自由に参加していただければ。みんなで楽しく、昔ながらの土壁づくりに挑戦してもらいたい。簡単な昼食とおやつ付き。軍手と飲み物持参、作業可能な服と靴で来ていただければ」と呼び掛ける。問い合わせは東原さん(TEL 090-4466-2905)まで。

志摩市で泥だらけになりながら土壁を塗る伝統構法 「家づくりはみんなで楽しく」

いかだ丸太の家みんなでつくる

伊勢志摩経済新聞2019.12.25掲載

施主「そこは○○さん担当ね」
  「その壁は『○○さんの壁』ね」
  「壊して塗り替えるまでその壁の名前は『○○さんの壁』に決定よ」

参加者○○さん「記念にサインや手形でも入れておこうか(笑)」

とその場が和む。


 会話は、昔ながらの伝統工法で家を建てよう進めている建築現場の土壁作りでの一こま。すでに家が完成してからの会話を思い描きながら楽しんでいる。

「志摩の小庭 いかだ丸太の家」
国土交通省の「気候風土適応型プロジェクト2018」平成30年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)に選定

「家づくりはみんなで楽しく」

 2016年にG7伊勢志摩サミットが開催された志摩市阿児町の賢島から賢島橋を渡った約2800 坪の小高い丘の上に、竹内和彦さんと妻の千鶴さんが、昔ながらの「石場建て」の建築構法で「志摩の小庭 いかだ丸太の家」(平屋建て、延べ床面積=約60平方メートル)という名の住宅を建築している。建築・施工は東原建築工房(志摩市阿児町立神)の代表・東原達也さん、設計はM5(エムサンク)アーキテクト一級建築士事務所(愛知県北名古屋市)の代表・六浦基晴さんが担当する。


 家は、三重県北部の朝明(あさけ)川で取れた「菰野(こもの)石」の玉石に柱を立てた「石場建て」、壁は周りの里山に自生する竹を割り、組み上げ、地元の農家から譲り受けた稲わらと地元の赤土を混ぜてこねた土壁。屋根にはこの地域の地場産業でもある真珠やカキの養殖でアコヤ貝やカキを吊るしておくいかだに使用されるヒノキの丸太を使い、断熱材としてもみ殻を入れる。床断熱にはもみ殻で作った燻炭を敷き、土間は地元の焼いたカキ殻や海水を混ぜて三和土(たたき)土間にする。

 地元の生産者や職人が、地域に伝わる伝統工法で、地域で生産・供給される建築材料をできるだけ使い、その地域の気候(外気温、日射、外部風など)を活用・制御する工夫などを取り入れ作りあげる。 景観にも意識し、完成してからも地域に根ざした住まい方をしていこうとする国のガイドライン「気候風土適応住宅」にも沿っている。

 「志摩の小庭 いかだ丸太の家」は、国土交通省の「気候風土適応型プロジェクト2018」平成30年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)に選定された。

「志摩の小庭 いかだ丸太の家」は、国土交通省の「気候風土適応型プロジェクト2018」平成30年度サスティナブル建築物等先導事業(気候風土適応型)に選定

みんなで作る。

 建築にあたって、1月24日に土壁用に使用する竹割り、3月12日、15日に地固め(ヨイトマケ)、11月17日、18日に土壁用の仕立て(竹小舞)と土壁塗り(外側)、12月3日、4日土壁塗り(内側)をそれぞれワークションプ形式で一般の参加者も募り、みんなで作業を行った。

「志摩の小庭 いかだ丸太の家」みんなで土壁塗り作業
「志摩の小庭 いかだ丸太の家」みんなで土壁塗り作業

伝統的な家づくりの楽しさ

 東原さんは「昭和の中頃までは、家を建てるときは親戚、隣組のみんなが集まって手伝い、作業していた。そこから家と家の付き合いがより親密になり、何かあったら助け合う当たり前の関係が構築されていったのだと思う。『出合い』や『結』などといわれるコミュニティーが自然と出来上がっていた。難しく説明するとそういうことだと思うがそんなことよりも、みんなで作業をすることがこんなに楽しいんだということを知ってほしい。今の建築現場でそういった時間を共有できなくなってしまっているのは少し寂しい気がする」と話す。

「志摩の小庭 いかだ丸太の家」みんなで「ヨイトマケ」地固め作業
「志摩の小庭 いかだ丸太の家」みんなで「ヨイトマケ」地固め作業

 「ヨイトマケ」とは、「地固め・土突き」の意味で使われるようになったが、元々は重機がない時代に、重い木の柱や石を滑車に吊るした槌(つち)にしてロープでくくり、数人で引張り上げて落とす時の掛け声が「ヨイっと巻け」から「ヨイトマケ」となったと言われる。歌手の美輪明宏さん作詞作曲の「ヨイトマケの唄」は、1966(昭和41)年のヒット曲でも知られている。

「志摩の小庭 いかだ丸太の家」みんなで竹小舞(竹組み)

 東原さんは「家の真ん中にある土間はみんなで食事を作ったり、会話したりできるように団らんの場として設計しているので、より多くの人が集うことを想定している。年明けにはその土間をみんなで作るワークショップを開催したいと思う。大工や建築、伝統構法に興味のある人も自由に参加していただければ」と呼びかける。

「家づくりはみんなで楽しく」もみ殻を燻炭に
「家づくりはみんなで楽しく」もみ殻を燻炭に

 次回のワークショップの日程は、東原さんのフェイスブックなどで告知・案内する。問い合わせは東原さん(TEL 090-4466-2905)まで。

業界紙の寄稿素案です

いかだ丸太の家

業界紙の寄稿素案です。読んでみて下さいね!志摩市 いかだ丸太の家 賢島をのぞむ丘の上に建つ、木組土壁石場建ての小さなおうちです 。「志摩らしさを」とのご希望と、映画「人生フルーツ」の津端さんとのご縁から、海に浮かぶ筏の丸太で「レーモンドスタイル」を試みました。 地固めの「よいとまけ」や、土壁の竹組やあら壁ぬり、たたき土間づくりなど、ご家族やご友人などたくさんの方々と共につくった、思い出深い「木と土の家」です。 地元の材料を用い、先人の知恵に学んだこの建物は、国土交通省の「気候風土適応型住宅」となりました。#レーモンドスタイル#人生フルーツ#東原建築工房 [Insta]
業界紙の寄稿素案です。読んでみて下さいね!志摩市 いかだ丸太の家 賢島をのぞむ丘の上に建つ、木組土壁石場建ての小さなおうちです 。「志摩らしさを」とのご希望と、映画「人生フルーツ」の津端さんとのご縁から、海に浮かぶ筏の丸太で「レーモンドスタイル」を試みました。 地固めの「よいとまけ」や、土壁の竹組やあら壁ぬり、たたき土間づくりなど、ご家族やご友人などたくさんの方々と共につくった、思い出深い「木と土の家」です。 地元の材料を用い、先人の知恵に学んだこの建物は、国土交通省の「気候風土適応型住宅」となりました。 #レーモンドスタイル #人生フルーツ #東原建築工房